
なぜ今DXが必要なのか?データで読み解く日本とベトナムの現実【企業のためのDX入門・第2回】
Be A Racer Team
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はじめに:これは連載「企業のためのDX入門」の第2回です
前回は「DXとは何か、デジタイゼーション(紙のデジタル化)やデジタライゼーション(業務のデジタル化)とどう違うのか」を整理しました。第2回では、なぜ今、企業がDXに取り組まなければならないのかを、日本とベトナムの最新データから読み解きます。結論から言えば、DXは「できればやりたい改善」ではなく、人手不足と競争環境の変化に対応するための経営基盤の維持装置になりつつあります。
1. 日本:「2025年の崖」の警告と、その後の現実
経済産業省は2018年のDXレポートで、レガシーシステムの刷新が進まなければ2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じると警告しました。いわゆる「2025年の崖」です(経済産業省「DXレポート」PDF)。2026年を迎えた今、この懸念は「予測」から「体感」に変わりつつあります。
人手不足は倒産の直接原因になった
東京商工リサーチ(TSR)の調査では、2025年度の人手不足に起因する倒産は前年度比43.0%増の442件と過去最多を記録しました。うち「人件費高騰」が195件(同77.2%増)と急増しています(TSRデータインサイト)。同年の企業倒産全体も1万505件と12年ぶりの高水準で、人手不足倒産は4年連続で増加しています(時事通信)。
ポイント:人手不足倒産の主因は「採用できない」ことだけでなく、属人化した業務が特定の従業員の退職で止まること。業務が人ではなく仕組み(デジタル基盤)に乗っていれば、退職・採用難の衝撃は緩和されます。
SMEのDXはまだ入口
中小企業基盤整備機構(SMRJ)の「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」では、101人以上の企業は約7割がDXに「既に取り組んでいる/検討している」一方、20人以下の企業では約25%にとどまります。進捗も「アナログ作業のデジタル化」段階が最も多く、データ活用・業務変革まで進む企業は少数派です(日商Assist Bizまとめ)。2025年版中小企業白書でも、DX推進の障壁として「費用負担が大きい」「DX人材が足りない」が全段階で上位を占めたと報告されています(中小企業庁・2025年版中小企業白書 第1部第1章第5節)。
| 日本の主なファクト(出典あり) | 数値 |
|---|---|
| DX未着手時の経済損失リスク(経産省DXレポート) | 2025年以降 最大12兆円/年 |
| 2030年のIT人材不足見通し(高位シナリオ・経産省調査) | 約79万人 |
| 人手不足倒産(2025年度) | 442件・前年度比+43.0%で過去最多 |
| DX「取り組み中+検討中」(従業員101人以上) | 71.9% |
| 同上(従業員20人以下) | 25.4% |
2. ベトナム:国策として加速するデジタル経済
ベトナムは逆のベクトルで、DXを成長エンジンとして国家戦略化しています。2026年6月9日、首相決定第1033/QĐ-TTg号により「2026〜2030年 デジタル経済・デジタル社会発展プログラム」が承認されました。2030年までにGDPに対するデジタル経済の付加価値比率を約30%へ引き上げ、50万社以上の中小企業のDXを支援する目標を掲げ、27の国家目標と115の重点任務を定めています(科学技術省(MST)発表)。
現状:まだ14%台、伸びしろが大きい
実際の進捗は、デジタル経済のGDP比率が2021年の12.87%から2025年に約14.02%へ上昇した段階です(2026年ビジネスフォーラム報道・VTC)。目標の30%まで倍増が必要で、政府・企業双方にとって今後5年が正念場です。
- 企業基盤:2025年時点で全国に約90万社、うち98%超が中小企業(SME)。SMEのDX支援なしに国家目標は達成できない構造です(Thuong Hieu Cong Luan)。
- 認知は高いが深い活用は少数:各種調査ではSMEの約92%がDXに関心を示し、基本的なレベルで活用を開始。一方でデータ活用・業務プロセス変革まで進んだ企業はまだ少数派です(Giao Duc Viet Nam)。
- 勢いのある裾野:2026年第1四半期だけでテクノロジー系企業の新規登録が1,394社増え、IT製品輸出も拡大しています。
3. なぜ「今」なのか:3つの構造的プレッシャー
① 人手不足は両国共通の経営課題
日本は少子高齢化で構造的な人手不足、ベトナムは経済成長に伴う人件費上昇と人材の流動化。どちらの国でも「人を増やして回す」経営モデルは限界を迎えています。少ない人手で同じ品質を出すには、業務のデジタル化と自動化が前提条件になります。
② レガシー(既存資産)の老朽化
日本ではレガシーシステムがDXの足かせであることが「2025-nen no Gake」(2025年の崖)で明示されました。ベトナムでもExcel台帳・紙帳票・属人作業といった「アナログのレガシー」が同じ役割を果たしています。資産が古くなるほど更新コストは上がり、データ活用の障害になります。
③ 取引先・顧客からの要求水準
日系企業との取引では、EDI・請求書電子化・セキュリティ基準・トレーサビリティなどデジタル対応が受注の前提条件になりつつあります。ベトナム国内でもE-invoice(電子インボイス)の義務化以降、デジタル対応はビジネス参加のチケットです。対応できない企業はサプライチェーンから外れるリスクがあります。
4. DXを「やらされるもの」から「武器」に変える
ここまでの数字を並べると危機感ばかりですが、DXは本来攻めの選択肢でもあります。
- 生産性:定型業務の自動化で、限られた人員を付加価値の高い業務に振り向けられる。
- 品質・再現性:作業が仕組みに乗ることで、ベテラン退職時も品質が維持される。
- データ経営:実績データが蓄積すれば、見積もり精度・納期管理・在庫最適化が改善する。
- 採用競争力:紙作業が少ない職場は若手・外国人材にとって魅力的。人手不足時代には採用の武器になる。
まとめ:DXが必要な理由は「流行」ではなく、①人手不足、②レガシーの限界、③取引要件の変化という3つの構造的圧力。回避策はなく、差がつくのは着手の速さと進め方の質だけです。
次回予告
第3回では「DXのロードマップ:現状評価・目標設定・優先順位のつけ方」を扱います。何から手をつけるか迷う中小企業向けに、最初の一歩の選び方と、失敗しがちなパターンを整理します。お楽しみに!
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